ドアのはなし
Story of Doors
LATE GEORGIAN 1765-1811
ジョージアン時代[後期]のドア
フランスとの7年戦争がおわり、平和を取り戻したこの時代、
ギリシャ復古調建築の特徴であるパラディアン様式が一般市民の家に広まっていった。
ジョージアン後期(18世紀後半)においては、一般的なジョージアン・スタイルのドアが多いなか、当時広まっていた、ネオ・クラシカル・スタイルの影響が見受けられるものも存在する。
ファンライトは、四角などのシンプルなものから半円タイプのものが流行しはじめるのもこの時代の特徴である。一般的には木製のファンライトが多いが、富裕層の邸宅などでは金属素材のものも見受けられる。
ドアのデザインは、シックス・パネルのものが主流で、色は、ブラックやダークグリーンが中心で、
パイン材が多くつかわれているが、邸宅などではオーク材のものも存在する。
18世紀後半になると、当時では斬新な、明るいブルーのドアなども登場してきて、街に彩りをあたえているのが興味深い。
BRTISH VICTORIAN 1837-1901
ブリティッシュ・ビクトリアン時代のドア
この時代のポーチは、雨風をしのぐ目的の他、家主の社会的な地位を表す目的でも発展した。玄関のドアは、上部のパネルがガラスのものも見受けられ、ゴシック・スタイルのアーチ型を施したものもこの時代の特徴である。
室内のドアは、厚みにより部屋の重要性を表す他、使用人に対しての防音の目的もあったと言われいる。
ARTS AND CRAFTS 1860-1925
アーツアンドクラフト時代のドア
アーツアンドクラフト運動(ARTS AND CRAFT)は、19世紀の工業化が広まるなか、クラフトマンシップの喜びや生き方を探求する目的のもと広まった運動である。
英国批評家のジョン・ラスキン(John Ruskin)は、中世の建築や建材のうつくしさに注目した、この運動中心人物で、 「モダンデザインの父」と呼ばれる、ウィリアム・モリス(WilliamMorris)等にも影響をあたえた事で有名である。
初期のARTS AND CRAFT時代の特徴としては、チューダー形式などの中世の様式をとりいれたプレーン・プランク(plain plank)のスタイルのドアがみうけられ、ドアノブやドアハンドルのかわりに、装飾された鉄製のヒンジやラッチをもちいたものがリバイバルされている。また、ジョージアン時代のオーソドックスな6パネルから着想をえたドアの復刻も見受けられる。
また、後期のデザインにおいては、ステンドグラスなども流行し、自然のモチーフをあしらったアールヌーボの影響がみられるのも時代の特徴である。
※ウィリアム・モリス(William Morris)
19世紀イギリスの詩人、デザイナー、マルクス主義者。多方面で精力的に活動し、それぞれの分野で大きな業績を挙げた。 ヴィクトリア朝のイギリスでは産業革命により大量生産された商品があふれるようになった。反面、かつての職人はプロレタリアートになり、労働の喜びや手仕事の美しさも失われてしまった。モリスは中世に憧れて、インテリア製品や美しい書籍を作り出した(植物の模様の壁紙やステンドグラスで有名)。生活と芸術を一致させようとしたアーツ・アンド・クラフツ運動は20世紀のモダンデザインの基礎にもなったといわれる。